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2018/10/17コラム⑥:神々の宿る島への冒険

阿南高専の小林です。

はじめての一人旅は18の春休みでした.バイトで貯めた10万円,ビザの必要がなく,治安的にも比較的安全で,どこか面白そうなところ,という条件で,大学の生協のカウンターにわくわくしながら冒険の計画を持ちかけました.当事,スマホも無い時代で,カタコトの英語しか喋れませんでしたが,まぁなんとかなるだろう,という若者に特有のポジティブさだけを頼りに,旅立ったのが,インドネシア,バリ島でした.

バリ島のウブドゥという内陸の町を拠点に,1ヶ月間滞在しました.ガムランの音楽,香辛料の匂い,ランブータン,ゲストハウスから見える鬱蒼とした木々,フレンドリーなゲストハウスのスタッフ...緩やかな時間が流れていましたが,見る物,触れるものすべてが新しく,毎日小さな冒険を積み重ねました.

1ヶ月も同じ町に滞在していると,次第に顔見知りが増えました.その中でも,特に仲良くなったバリ人に連れられて行った食堂で出会ったのが「バビグリン」.豚の丸焼きの切り落としとめちゃくちゃ辛いけどうまいソースがぐちゃっとご飯の上にのった伝統料理で,辛いもの好きには,たまらない食べ物です.そして,安い.当事,確か100円もしなかった様に記憶しています.1ヶ月間の冒険の終わりには,絶対,またすぐ戻ってきてバビグリン食べるぞ,という気持ちで,帰国しました.

気が付けば,それから二十数年が経っていました.バリ島だったらいつでも行ける,と油断していました.1ヶ月の滞在は次第に美しい記憶になり,そのままにしておきたい,と,どこかで感じていたのかもしれません.そして,2017年の夏,教員になると考えたこともなかった18の自分からは想像もできなかったことですが,高専教員として国際会議に参加するという目的で,私はまた,バリ島にいました.自由時間の合間をぬってウブドゥを訪ねました.

二十数年という時間の長さは,町のあちこちから伝わってきました.狭くてボコボコだった道路は,広くきれいに舗装され,半分露店風で軒先いっぱいに積み上げられていたバティック屋は,しっかりとしたコンクリートの今風なブティックになっていました.当事,泊まっていたゲストハウスの場所を近くの店の人に尋ねると,「この通りではなくもう一本,向こうだ!(商売の邪魔だ,さっさと向こうに行け)」.バリの人ってこんなに愛想悪かったかな,と思いながら,ゲストハウスを尋ねると,意外にも昔と同じ佇まいでそこにありました.

「二十数年前にこちらに宿泊させてもらったものです.その節はお世話になりました.」

「そうなの?!訪ねてきてくれてどうもありがとう.」

中から出てきたのは,当時のオーナーだったお婆さんに似た感じの若い奥さんでした.そして,「バビグリン」.記憶をたどりながら場所をスマホで検索すると,店名が「イブオカ」であることを知り,たどり着くと,以前と比べて,広くしっかりとした店構えが現れました.仲良くなったあのバリ人もどこにいるか,今ではもうわかりません.

辛さにヒーヒー言いながら食べるのを楽しみにしていたバビグリンですが,実を言うと,残念ながら営業時間外で食べられませんでした.次は,また何年後になるかわかりませんが,きっとまたいつか,縁があってバリを訪ねる時の楽しみとして残しておきたいと思います.

 

 

 

 

 

 

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次回のコラムは、呉高専の上杉先生にお願いします。

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